ミスターシービー
川が呼んでいるのに、アタシは、重い。ここはどこ?なんでアタシの身体は、こんな肉に取り憑かれてるの?風になりたかった。なれたーって、錯覚できるのは、走ってるときだけ。ほかは、ずっと、重い。まあいいけどさ。諦めてるよ。わかってる。
捕まえられるもんなら、捕まえてみなよ。そしたら、アタシたち、二人とも、風になれるかも。海辺を走ってたって、海は変わらずそこにあるだけで。山道を走ったって、アタシは森にはなれない。わかってる。わかってるけど、もどかしい。いらただしい。それ以上は、わかんない。
アタシさ。子供のころ、家族で川に遊びに行って。夢中で石を拾ってたのね。つやつや光る石がずらーっと並んだ河原は、まるで宝石が降り積もってるみたいに見えて。そんなの見ちゃったら、もう、身体が勝手に動いてた。アタシだってよくわかんないけど。止められないんだ、そういうの。
いっちばんきれいな石を見つけてさ。もうまんまる。ずーっと川を転がってきたのか、ネイルみたいにツヤツヤしてて。わーっ!と思って、振り返った。そしたらね、遠くで、家族や、ちょうど遊びに来てた子どもたちかな。そういう人たちが、ワイワイ楽しそうにしてるのが見えて。うん。なんだか、その光景が、すっごく印象に残ってるんだ。……遠く、見えたの。その人たちが、すごく、遠く見えた。
なんでだろうね。わかんないけど。アタシ、だから、風になりたいのかな。川も山も海も森も、アタシを呼んでくれはするけど、でも、やっぱり、一緒にはなれない。はは、当たり前だけどさ。なんでこんなに、重いんだろ。ばかなのかな、アタシ。ずっと、よく分かんないんだ。
自由なふりをしたって、そんなの、自由じゃない。わかってるつもりだったのに、わかってなかったのかな。遠くて、重い。アタシ、どこにいるんだろう。