真っ白の部屋
あーあ、わたし、いちどくらい、あの入道雲の下でね、腕をワーッと広げて、眠ってみたかったなあ。いいなあ、みんな。ずるいなあ。もう、アンパンマンのシールも、おてがみもいらないから、だめだって言われてること、ぜんぶしたいよ。
先週ね、クラスの男の子がきて。なに話したかは忘れちゃったけど、全身泥だらけで、うらやましかった。ほっぺたに傷なんかあって。わたしは、内側からくさっていくから、傷一つない。ねえ、傷口に花が咲くってホント?ぱっくり割れた赤い傷口に根が張って、血を吸いながら割れ目を閉じてくんだって、それで花が咲くんだって、本でよんだよ。ねえ、ホント?それ
……
この部屋のシーツは3日に1回交換される。おねしょしちゃっても、よだれが垂れても、すぐにまっしろなシーツになる。シミひとつないしろい部屋で、わたし、まるで、生きてないみたい。生きてないみたいなのに、死んでるわけでもなくて、へんなの。
たまにね、ニコニコした王様みたいなひとが廊下をとおって、家来みたいなひとたちがその後ろをゾロゾロついていく。なんだか、前よんだ物語のなかみたい。じゃあ、どこかにホントのわたしがいるのかな?ほんとのおうちがあるのかな?もうこの部屋をでれないわたしには、うまく想像ができない。どこにほんとの人生があるんだろ?
あーあ、わたし、一度くらい、悪いことしてみたかったなあ。悪いこと、してみることすらできなくて、いい人みたい。きたなくなることすらできなくと、きれいでいなきゃいけないみたい。ずるいな、わたし。
だんだんくさっていく。