お前は幸せだったかい。

生きても死んでもそんな変わんねえけどさ、せめて、このたった十数年。お前が幸せだったらいいな、と、思う。

今までありがとう。さようなら。また次会うときは──だなんて言わない。約束なんてしないさ。お前は、たんに、死ぬ。感傷や空想でお前を汚すことなんてしない。お前の死は、正真正銘、ただの、死だ。焼かれて骨になって、それで、どこにもいなくなる。それだけの、死だ。

たいした犬だったよ、お前は。ちいせえ体の分際で、俺に、こんな大きな穴を開けていきやがる。そう懐かれた覚えもねえのに、愛おしくて仕方がねえ。

だから嫌だったんだ、犬なんて飼うのは。すぐ死んじゃうのにどうしてペットなんて飼うの、って、小学4年生のときに言った。お前を家に迎えるときだった。その言葉が十数年越しに本当になってしまった。クソ。

お前、死ぬんだな。本当に死ぬんだな。

……

なあ、俺さ、なんとなく、自分が死なないんじゃないかって思ってたんだ。バカみたいだけどさ、たぶんそうなんだ。だって、ふだん目にする、教室も、本も、テレビだって、街中だってみんな、「いつまでもピンピンして続きますよ」みたいなツラをしてやがる。深夜、配信を聞きながら歩いてたらさ、病や死がまるでこの世界にはないみたいに思っちゃったりして。ハハ、バカみたいだけどさ。そうだったんだ。

……

なあ、お前、本当に死ぬんだな。弱っていって、介護なんか必要になって、ゆっくり体が老いて、そして、死ぬんだな。ああクソ、なんてことをしてくれたんだ、お前は、